佐井好子

日本語音楽の特異点【佐井好子】の世界

佐井好子

どうも。音楽の世界を探検しつつ、自分でも音楽を作ってるSai(@saisei_to_hakai)です。

70年代後半から活動する孤高の女性シンガー・ソングライター、佐井好子さんについてお伝えします。

シン
音楽マニア歴30年の僕がお伝えするよ!

日本語音楽の特異点【佐井好子】の世界

日本語音楽の特異点【佐井好子】の世界

佐井好子

日本語歌詞の歴史に妖しく輝く特異点。その音楽は魔の者にしか視えない幻想郷。

  • 1953年生まれ、奈良県出身
  • 子供の頃から絵と本が好きで、子供の頃の好きな作家は江戸川乱歩
  • フォークグループに憧れてバンド活動もするようになる
  • 美大への進学を目指すが不合格となり、同志社大学に進学

進学してすぐに腎臓病にかかってしまい、病床に伏した佐井好子。この時さらに読書に傾倒。

小栗虫太郎、橘外男、夢野久作、谷崎潤一郎、久生十蘭、横溝正史などなど。幻想文学を片っ端から読んでるうちに、彼女の作品の世界観が形成される。

マンガでは林静一、つげ義春、山上たつひこなども好んで読んだ。

その頃から詩作を始める。「詩を歌にすれば多くの人に聴いてもらえる」と思い、退院後にギターでの作曲を始めるようになる。

ラジオのコンテストなどに応募してお声がかかり、1975年に『萬花鏡』でデビュー。中島みゆきや山崎ハコらとは同期。

密航

同年に2nd『密航』をリリース。彼女の感性のルーツを占める「シルクロード」をベースに、ある種の意識の航海を描いた傑作。ちなみにジャケットの絵は水彩色鉛筆で描いた自作。

胎児の夢

1977年、夢野久作の世界をモチーフにしたアルバム『胎児の夢』をリリース。のちに日活映画『夢野久作の少女地獄』の主題歌も担当する。

1978年に4th『蝶のすむ部屋』をリリース。ジャズバンドがバックになり、ジャズ寄りな楽曲になる。

蝶のすむ部屋

この後、彼女はインドを旅したのち「自分の気に入る曲ができなくなった」といい、音楽活動を休止。活動休止中にウィリアム・ギブスンの『ニューロマンサー』について語ってたらしい。

長らく活動を休止していたが、2008年にボアダムスの山本精一らをバックに新作『タクラマカン』をリリース。

タクラマカン

入手困難だった過去作も紙ジャケット仕様で再発売され、一部の音楽ファンより注目される。

Youtubeによって海外で謎の人気があり、佐井好子の曲をカバーする人もいる模様。ジム・オルークは佐井好子ファン。

松田優作も大ファンで、自分でもカバーして歌ってた。

坂本慎太郎さん(ex.ゆらゆら帝国)も「冷たいのか熱いのか、やさしいのか恐ろしいのか、つかみ所の無い歌声。さりげなくビブラートしながら消えてゆく声の余韻に一瞬気が遠くなるような快感を味わった」とコメントしている。

佐井好子の楽曲は強烈な世界観

佐井好子の楽曲は強烈な世界観

歌詞の世界観が完全に幻想怪奇小説の世界。恐ろしさと美しさ。恍惚と官能。退廃。残酷。希望。江戸川乱歩や横溝正史や夢野久作の感じに魅かれてしまう人にはたまらんでしょう。魔界に引き込まれる感じというか。

メロディは魔術的で幻惑的。『青いガラス玉』って曲なんかはその極地。なんらかの儀式に巻き込まれている感じで魔女感すごい。音楽はいったいどこから影響受けてきたのか。こんなんフォークの流行りに乗っただけのシンガーには絶対作れない。

昭和歌謡ではあるけど、よりバンドが強い音楽。バックを務めてるのは日本の超一流ばかり。ジャンル的にはフォーク、プログレ、サイケロック寄りだけどジャズや民族音楽・楽器も取り入れてる感じで曲による。

1stは「和」な感じだったんだが、続く2ndからどんどん異国への憧憬が出てくる。『人のいない島』って曲があるんだが、これは日本の島慣習に疎外されて生きる自分のことを歌った曲ではないだろうか。

『白い鳥』ってピアノ曲なんかは、完全にこの世を捨てて別世界に飛び立ってく感じがしてめちゃめちゃ美しい。

2015年に新曲『日本一小さな村』をライブ披露していて。「日本に生きてきてずーっと絶望してきた人の歌」という感じがすごいする。創作物や自身の創作を希望にしてなんとかギリギリやってこられたのでしょうね。全盛期のようには歌えない歌唱も含め、美しさとやるせなさで胸がいっぱいになる。

佐井好子 まとめ

佐井好子 まとめ

古今東西いろいろ聴いてきたつもりでしたが、佐井好子さんは僕もYoutubeのレコメンドで知った。で「なんじゃこの異端!」と即ハマり。こんな独自性ある音楽やってるすごい人なのに、一度もテレビやラジオで耳にしたことがない。

こういうマジモンの才能に光を当てない日本のメディアやチャートはどうかしてるね。聴く人が少ないからなワケだが。

こんな唯一無二なアーティスト。時間と共に伝説になってくとは思う。

でもまだお元気なうちにもっと広まって評価して欲しい。

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