ネトフリ配信になった映画『視線』がクラシカルな良質サスペンスでとってもよかった!
ので何がどう良かったのか語りたい。
映画『視線』はサイコサスペンス史を受け継ぐ良作だった【ネタバレなし解説】
『視線』のあらすじ
ストーリーはめちゃシンプル。
異国に住むことになった女性が、むかいのアパートからいつも誰かに見られてることに気づく。
それからいつも視線を感じて追いかけ回されてる気がしてくるんだけど、これは情緒不安からくる気のせいなのか?果たして?
という内容。登場人物も少ないのでわかりづらい部分はまったくナシ。
90分ちょいの尺なので長くもなくてヨシ。
『視線』の巧さ・面白さは「距離感」にある
前半は「言葉のわからなさ」や「異国に来た頼りなさ」という我々にもよく理解できる不安をヒロインが抱えていて、そこから事件の香りがする不安感に徐々にスライドしてく感じが巧み。
で、この映画のキモは「距離感」を楽しめるかどうかだと思います。
ふだん、よく知らない人からジロジロ見られてイヤだな、とか、「この人なんか距離近いな…」とか、そういう気持ち悪さってあるじゃないですか。
そういう保っておきたいパーソナルスペースが揺さぶられる怖さと気持ち悪さ。時にはこっちから踏み込んでみたり、不意にいきなり目の前に現れたり。
現代的な距離感の駆け引きが緊張感あって面白かった。
こだわりを感じる映像美
そして映像美がめちゃめちゃ意識されてる画面。何気ない静かなシーンでも撮る角度とか切り取り方とか絵画的でとても良い。
クロエ・オクノ監督
このクロエ・オクノって監督は今作で出てきたっぽいのではじめて知ったんだけど、どう見ても古典サスペンス映画をかなり意識して撮ってる。
めちゃ現代技術でヒッチコックしてる感じだった。
ヒロインはマイカ・モンロー
ヒロインは『イット・フォローズ』でヒロインやってた彼女なんですね。金髪なっててはじめ気づかんかった。
バーン・ゴーマンがハマり役
そして存在感を放ってたバーン・ゴーマンという俳優さんもすばらしく。「あなた普段からそういう人なんですよね?」としか見えないくらいハマってた。クラフトワーク的な無機質キャラ。
どっかで見た顔だけど何の映画だったかなーと調べたら、ギレルモデルトロ作品によく出てる人ですね。どーりでなんか持って生まれた異質感がにじみ出ているというか。
ロン・パールマンとコンビ組んでM-1にでも出てみてほしい。
コンビ名はウッチャンナンチャンぽく「ゴーマンパールマン」で語呂もいいし。
「ドウモーゴーマンパールマンデース」「ベッピンサン、ベッピンサン、ヒトツトバシテ…ベッピンサン(パールマン)→ナンデヤネン!(ゴーマン)」みたいなお決まりネタをカタコトでやるだけでも異質な存在感で笑いを取れると思う。
『視線』のラスト
映画の話に戻って。後半の内容については触れないが、事が起こるタイミングがお約束のタイミングより意図的にズラされてる感じが新鮮味あった。
サスペンスとしては静かで地味めな内容ではあるが、撮り方や機微を表現する演出は間違いなく才能が光る良作。
『視線』って邦タイトルつけるほど「見る」ことにフォーカスした作品ではないけれど(その点はジョーダン・ピール監督の『NOPE』の方が本質的に取り扱ってる)最後の視線は誰にどう向けられるのか、ぜひラストまで見てみてもらいたい。
余談。同じ監督とヒロインで『Brides』という映画を撮ってるみたいです。
昔のイタリアを舞台にしたヴァンパイアものみたい。そちらも楽しみ。