「B級ホラーでも観るかー」と思って視聴した映画『クリープ2』が傑作すぎた。
何がすごかったのか、あらすじを振り返って腑に落としたいと思います。
映画『クリープ2』は映画史に残る怪作だった話
初作の『クリープ』を振り返る
まず1作目の『クリープ』。こっちは確かにサスペンスホラーだった。
あらすじは「映像を撮ってくれる人募集」って広告を見た男がカネ欲しさに言ってみると…依頼主がキモくてヤベーやだった、って話の流れ。
邪悪な心を持ってるタイプじゃなく、社会通念から完全にズレてるサイコパス。
撮影しに行った男は「こいつヤベー!」って気づいて逃げるわけだが、サイコ依頼主は親愛の情を持って執拗に追いかけてくる。という内容が『クリープ』。
話としてはそんな斬新なものじゃないけど、すごい点がけっこーあるんすよ。
『クリープ』はPOVの良作
まず、どう見てもほとんど製作費がかかってない。
「ハンディカメラ1個で撮りました」って撮り方の『食人族』に始まり『ブレアウィッチ』で広まったPOVの系譜。
(POVホラーだと個人的には韓国の『コンジアム』やシャマラン監督の『ヴィジット』が見どころ多くておすすめ!)
サスペンスなのに血もほとんど見なかったので、血のりすら使ってないんじゃないか。
登場人物が2人いて、ひとりが「変でヤベーやつ。」これだけ。
俳優が怪演するキャラのみで最後まで飽きずに見れる、というのがすごい。撮るのうんまい。
こういうの見ると「スマホあれば映画って作れるんだなぁー」と思わせてくれる。個人で映画撮りたい人にはぜひ観てもらいたい一本だった。
というわけで初作の『クリープ』は低予算でうまいこと撮ったなーって印象。
変人を変人が受け止める怪作『クリープ2』
で、すごいのは『クリープ2』。まちがいなく傑作。映画の内容をひとことで言うなら、
「空回りしつづけてきたキモおじ&女性底辺Youtuberの挑戦と愛憎」。
話は前からの続きで。再び撮影してくれる人を募集。すると今回の志望者は女性。
フツーの流れなら「今度は女性がキモおじに追っかけ回されてエジキになるんかな?」ってとこじゃないですか。
でも『クリープ2』は「追い立てる側vsおびえて逃げる側」というホラー構図じゃなかったんです。
サイコパスなキモおじに負けないくらい、この女性がズレた感受性の持ち主だった、っていう。楽しい新キャラがぶつけられる。
『貞子vs伽椰子』の記憶を塗り替える、がっぷり四つな異常精神バトルが始まります。
おかしな二人の出会い、ケミストリーから謎理論が展開して「映画を撮ろう」という話になり…何を見せられてんだこれ?という異常ホームビデオ映像が続く。
社会になじめず、はじかれつづける二人が何かしらの実を得ようともがく姿。ザ・ノンフィクションの神回なのだろうか。
美しい大自然の中で、野鳥がさえずる。それに対して撮影のジャマになるからってブチキレたりもする。
うまく撮影できずにかんしゃくを起こしてふて寝する姿は仔猫のゴメン寝のようにカワイイ。
悲哀を捉えた笑えるシーンがめちゃくちゃ多い。キモオジがいつ凶行に及ぶかわからないサスペンスホラーの緊張感は残しつつ、実質はコメディ。
かと思えば、社会不適合の二人だからこそ生まれた一瞬の恋なのか友情なのか、みたいな場面もあり。美しいような笑えるような…どういう感情なんだこれは。
でまぁ結局は蜜月が続くわけもなく破綻するわけですけど、この二人の日々にはキラリと光る何かがあった。
リアルな社会に通じる異常さ
イカれたフィクション映画なのにこの作品、そこまで現実離れしてるようには思えない。
この映画に出てくるようなおかしな人はリアルにたくさんいるわけじゃないですか。
世に嫌われる空回りおじさん、謎理論で正義をふりかざす投稿者、恨みつのらせる弱者男性。
わたくしだって人のこと笑えたもんじゃなく社会になじめないイビツさだらけの人間ですし。
世の女性たちだっていろんな闇を抱えてらっしゃる。「ジムとプールにしか生息してません」みたいな虚像通りの人はほとんどいないわけで。
リアルと地続きだからこそ笑える『クリープ2』。たりないふたり、魂のふれ合い。
というわけで『クリープ』と『クリープ2』はオススメです
人間の滑稽さ・異常さを真正面から受け止め、受け入れる話だったから、ある種の美しさが垣間見える作品でした。
思わぬ掘り出しモノでしたが、たぶん炎上コメント欄で石ぶつけるタイプの人には面白さがわからない映画のような気がします。
この作品に唯一リクエストするなら…エンディングでレディオヘッドの「クリープ」流してもらえるとさらに狂っててサイコーなんじゃないかと。
シリーズ三部作みたいなので個人的にはサスペンスホラー→コメディ→ときてラブロマンスになったら予想ナナメ展開で楽しそうだなぁ。
『クリープ3』、変な展開になってくれることを期待!